ジャズピアノの今井藤生です。京都でジャズ教室&音楽練習スタジオをやってます!
楽曲分析
「ゴリウォーグのケークウォーク」

(Golliwogg's Cakewalk)


 楽曲分析第一回はクラシックからジャズへの橋渡し的な存在であるドビュッシーの曲を選びました。
「牧神の午後への前奏曲」と思ったのですが、分析を試みましたが、記述(作文)が難しそうでたので、
初回は規模も比較的小さく、聴いた感じにもジャズらしさを感じやすい「ゴリウォーグのケークウォーク」をえらびました。


 とりあえずどんな曲か演奏をお聴きください。
クラシックピアノ専門の演奏家ではありませんが、
がんぱって練習して弾きました。
ちょっと楽譜と違う部分もあるかもしれません。
(分析書きながらいくつか発見してしまいました。)
 ご容赦お願いするとともに、楽譜と違う音等ありましたらご指摘ください。
テンポは一般に演奏されているものよいだいぶ遅いと思います。






 なおこれまでにすでに多くの方の分析、解説があると思います。
先輩方の解説を参考にさせていただ部分も多々ありますが(下記文献)、
しかし和声等音楽的分析につきましては、一部先輩方の著作を参考にさせていただいた部分もありますが、
詳細は概ね私自身の分析や感じ方です。
必ずしも一般に語られているものとは限らないかもしれません。
ご了承ください。


①背景

 ドビュッシー(フランス、1862~1918)
1908年出版の「子供の領分」の第6曲。
音楽は短くシンプルで時代にしては古典的に聴こえますが、
ドビュッシーのピアノ曲としては比較的後期の方です。
ちなみに近代音楽の幕開けといわれた「牧神の午後への前奏曲」は1894年作曲です。

 ゴリウォーグは当時のイギリスの絵本に出てくる黒人の男の子人形のキャラクターの名前だそうで、
ケークウォークはアメリカの黒人のダンスの一種(ヨーロッパで流行していたとのこと)、のちのラグタイムやジャズのリズムにつながっているよう
です。


②全体の構造

 曲は複合三部形式。
提示部ー中間部ー再現部、と名付けます。中間部は前半後半に分けて考えます。
調性はE♭Major(中間部はG♭Major)であり簡潔な構造です。


③序奏(導入部、イントロ)

 9小節の序奏で、メロディーとしてのモチーフ及び伴奏リズムの提示があります。
モチーフは民謡調で、ペンタトニックのような、ブルースのような、感じです。
なかでもC♭(同主短調の6度音)は特徴的です。
この旋律モチーフは私には日本(東洋)の旋律のように聴こえます。


④提示部

 10小節目から、低音の主音保続(主音属音の二重保続)の上に
A♭m6(Ⅳm6、同主短調E♭マイナーからのサブドミナントの借用)と
2度(F)の付加されたE♭(Ⅰ、コードネームでいうところのadd9)、
そしてその伴奏の上で、民謡調のメロディモチーフが奏されます。
おのおのは単純ですが、これらが組み合わさり独特の雰囲気になります。
今の我々の感じ方からすると、いわゆるクラシックいうよりは、ジャズ、ポピュラーな楽曲な感じです。

 時代から言って、ガーシュウィンなどミュージカルや映画音楽(後のジャズスタンダード)の作曲家や
デューク・エリントンはじめ20世紀初頭のジャズがドビュッシーから継承した部分は大きいということがわかります。

 提示部前半の22小節目では短三度上りG♭Majorコード(属調B♭からみるとⅥ♭)となり内声部の半音階上行ラインが和音をあいまいにしますが、
すぐにドッペルドミナント→ドミナントを想起させる半音下向の和音に変わり、
25小節目に古典音楽の定型ともいえる属調に終止します。
(そういえば、より和声進行のあいまいな「牧神の午後への前奏曲」でも第一部は属調終止でした。そのこだわりはちょっと感じます。)

そののち右手左手の交差する部分があり(演奏は結構難しい)、
ピアノ演奏の技術としてはちょっと華麗な部分です。
そしてもとの主題にもどり余韻を残しながら第一部を終わります。


⑤中間部

 中間部は短三度上のG♭Majorです。ここでもしばらく低音は主音属音の二重保続です。

 48小節目(中間部に入って2小節目)の右手最後Fの和音は唐突に関係ない和音が鳴り響き、意外な感じをもたらします。
しかし実際には単なる経過和音で半音上行しG♭に解決します。もしこの和音一番上の音(F)を除いて演奏するとごくごく普通の経過和音であることがわかります。
こんな単純なことで音楽の様式がガラッと変わって聴こえるのは驚きです。

 61小節目(Cedez)からはドビュッシーが初期に多大な影響を受けたドイツの作曲家ワグナーの曲で有名な楽劇「トリスタンとイゾルデ」の冒頭のモチーフ(「愛のモチーフ」とか「憧憬のモチーフ」とか言われるものです)を引用しています。

 ややゆっくりな部分ということもあり、非和声の使い方が素敵で、
その組わせによって、様々な偶成和音(*注1)を生み出しています。

  (*注1)偶成和音 音楽の友社「和声・理論と実習」(俗に芸大和声と言われている教科書での用語です。)


⑥再現部

 中間部最後の方に、もとのモチーフの断片が少し現れ再現の予感の後、
第一部の再現部(90小節目、Toujoura retenu)となります。
その冒頭2小節だけ低音無しですが、その後再現部前半は第一部の忠実な再現です。 

 そして再現部後半に入り110小節目、
前半の提示ではA♭/B♭(属音上のⅣの和音、Ⅴ7sus4)だったのところにその半音上のA/B(B7sus4)が奏されます。
シャープで書いてあることもあり唐突に意外な和音が現れたように聴こえますが、
C♭7と思えばドッペルドミナントの変化形であるところのⅥ♭の和音です。
それがsus4として現れるので、古典和声とは違った印象を与えます。
 (いわゆるジャズ理論風に解釈した方が分かりやすくなると思います。)

 最後は提示部の最後と同様余韻を残しながら収束し、モチーフでも印象づけられていたC♭の音から音階で主音まで下行し終止します。


⑦文献等

とらえ方、考え方など影響を受けたもので、必ずしも詳細の引用ではありませんが・・・

 ☆柴田南雄著、西洋音楽史~印象派以降(音楽之友社)
 ☆全音楽譜出版社「こどもの領分」の楽譜中、松平頼則氏の解説
 ☆ゴリウォーグについてなどのことについてはWikiedia等の解説も参考にしております。

今回は間に合いませんでしたが後日、
♪ポイントとなる楽譜例の掲載
♪および和声分析をわかりやするため、リズムを除いた簡略化演奏(ハ長調で)も準備できればと思ってます。
次回ブログもどうぞ(簡略化演奏)
http://imaijazz.blog76.fc2.com/blog-entry-81.html

もっと短くまとめるつもりが長文になりました・・・
読んで下さいりありがとうございます。

ご指摘、ご感想ありましたら、
またはメールフォームから、または
 fj-imai-ongaku@y7.dion.ne.jp (今井PCメール)
 までよろしくお願いします。

今井・ホームページ
今井ジャズ教室&音楽スタジオ(京都四条烏丸)
http://www.eonet.ne.jp/~imai-jazz/index.html
(クラシックの曲を分析しながら演奏するレッスンも行っております♪)






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【2017/05/03 22:49】 | 和声分析・楽曲解説(クラシック、ジャズ)
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