ジャズピアノの今井藤生です。京都でジャズ教室&音楽練習スタジオをやってます!
楽曲分析~ショパン・「革命」~(その1)
「革命(12の練習曲作品10の12番)」
(Etude Op.10 No.12 "Revolutionary")


ショパン革命楽譜

 今回は左手の動きで有名なショパンの「革命」の和声分析(アナリーゼ)をしたいと思います。
左手、すなわち低音が単なるアルペジオでなく非和声音を伴い動くので、本来のベース音を見出すのに少々見極めが必要でした。

 とりあえず自分で演奏してみました。もともとピアノの専門の演奏家でないところにもってきて、難曲なので20年がかりの練習です。ちょっと速度は遅めです。ご容赦ください。




<背景>

作曲者はフレデリック・フランソワ・ショパン(Fryderyk Franciszek Chopin、1810~1849年、ポーランド)

 練習曲作品10の全12曲は1829~1832年の間に作曲されているので「革命」もショパン20才ごろの作品と思われます。タイトルの「革命」は献呈されたリストが命名したそうです。左手の早い動きが特徴的です。その上で右手がオクターブでメロディーを奏します。初期のショパンはウイーン古典派(※注1)、特にベートーベンの影響は濃いといわれています。

 ※注1ウイーン古典派
 18世紀後半~19世紀初頭ごろのハイドン、モーツァルト、ベートーベンに代表される作品スタイル。ソナタ形式など形式・様式面と和声法などさまざまな観点があります。現在の和声法はこの時代確立されとものと言われています。ショパンは形式面ではあまり影響を受けていないようです。

 具体的な分析に入る前に、分析結果を踏まえメロディーと和音に集約した演奏をしましたので、聴いてみてください。
(いわゆる和声の還元のような感じです)



 以下詳細の分析にあたっては、お手持ちの楽譜を参照しながらお読み頂ければ幸いです。
楽譜お持ちでない方は、「ペトルッチ楽譜ライブラリー」等のサイトで楽譜をダウンロードできます。

<全体の構造>

 全84小節を大きく以下に分割してみました。

 ①1~10小節 導入(序奏)
 ②11~28小節 第一部(提示部)
 ③29~40小節 第二部(中間部)
 ④41~50小節 間奏(再現部への序奏)
 ⑤51~76小節 第三部(再現部)
 ⑥77~84小節 コーダ(終結部)

 概ね三部構成ですが、第二部(中間部)も曲想は同じです。
形式(様式)的にはバッハのインベンションや平均律クラヴィア曲集中の曲などと同じと思えます。


①1~10小節 導入(序奏)

 すべてG7(Ⅴ7)です。左手アルペジオにはルートと5thに音階の上の補助音(ラ♭とミ♭)が加わっています。


②11~28小節 第一部(提示部)

 右手で主動機(ドレ――ミ♭・ミ♭~)が始まる。 3小節Cmの後Cdim(14小節目)。主旋律4小節目が今後さまざまな転調の節目です。ここではCdimはD7♭9(Cmのドッペルドミナント)の第三転回形であり、
G/B(Ⅴ)⇒C7/B♭(ⅳ調のⅤ7)⇒F/A⇒Fm/A♭(Ⅳ)⇒C/G⇒Cm/G⇒Gと進行する。ここは機能和声どおりで定型の進行です。
F⇒Fm(ラ⇒ラ♭)C⇒Cm(ミ⇒ミ♭)は経過音ですが長調短調をあいまいにしています。
 21小節目より再度主動機となり今度は先ほどCdimだったところがF7/Cとなります。これによりB♭Majorに転調し、以後
B♭/D⇒E♭(5→#5、Ⅳ)⇒C7/E⇒Edim(ⅴ調のⅤ)⇒B♭/F⇒E♭m/G♭(Ⅳm)
⇒G♭7(Ⅵ♭7、増六の和音※注1)⇒B♭/F
と進行し23小節目でB♭(主調のⅶ度調)に終始し第一部を終えます。

 ※注1、Ⅵ♭7、増六の和音
 コードネーム的に記載したが、5thが半音低められたドッペルドミナント(ⅴ度調Ⅴ7♭5)の第二転回形すなわち♭5が低音に配置されたものです。増六の和音と言われていて、根音は省略されたり、♭9に置き換わったりする場合があります。いわゆるウィーン古典派の機能和声の象徴するような和声進行感となります。厳密にはⅥ♭7ではないが(7th音は短7度でなく増6度なので)、記載上便利なので、以下このように表現します。


③29~40小節 第二部(中間部)

 第一部でB♭に終止したかと思うと、2部に入るや突然シャープのついた和音が現れます。
29~30小節目G#m⇒D#mそして31~32小節は長2度下方の平行反復でF#m⇒C#m。ドミナントは存在せず、短三和音が連続するので調性はわかりません。しいて言えばB♭をA#と思い、D#mで分析するとA#(Ⅴ)⇒G#m(Ⅳ)⇒D#m(I)です。しかしⅣ⇒Ⅰが長2度下方で反復するので、いずれにしても調は確定しません。第一部の典型的な機能和声との対照(コントラスト)はすばらしいと思います。
 そして32小節目にはG#7(C#mのⅤ7)からBb7⇒C7と全音上方に2回平行反復を繰り返しFm(Ⅳ)に到達します。7thコードが解決せず全音ずつ上がるのでその間解決感はなく不安定です。Fm以降はⅳ度調を経てカデンツに入ります。


④41~50小節 間奏(再現部への序奏)

 曲冒頭の序奏と同様のG7(Ⅴ7)のパッセージです。


⑤51~76小節 第三部(再現部)

51~64小節目までは右手変奏が加わる以外は第一部の再現です。
 64小節目Cdimは第一部ではCmのドッペルドミナントでしたが、ここではG♭のドッペルドミナントA♭7(♭9)の第一転回形でありG♭/D♭に解決します。そして上声がソ♭⇒ファ⇒ミと半音下降しミとなったところの和音骨格をC7と考えると、これがF♭MajorのⅥ♭7(増六の和音)として解釈されF♭/C♭に解決します。(かなり遠隔調ですし、難しく思えますが、曲中最も美しい部分と思います。)
 そしてF♭/C♭の中のファ♭が半音上方のファ♮、半音下方のミ♭にずれてFm7(♭5)になりB♭7からE♭へ解決します(この曲中初めての平行長調)。
 平行長調はこの一瞬ですぐG7となりCmの後D♭/F(ナポリの6の和音)を経由し定型カデンツとなります。
64小節目Cdimからの和声進行は思いがけないところに転調して美しくかつ激しく圧巻ですが、第二部の転調とは対照的にウィーン古典派機能和声に忠実に沿ったものです。


⑥77~84小節 コーダ(終結部)

下属和音⇒主和音の典型的なプラガル終止(変終止)。文字通りアーメン終止(祈りの意を込めた)といっていいような気がします。
C7♭9(ⅳ調のⅤ7)⇒Fm(Ⅳ)⇒C7♭9⇒F⇒Fm(Ⅳ)
⇒C7♭9⇒F⇒Fm(Ⅳ)⇒Csus4⇒C
左手の動きは荒々しいまま2回変終止を繰り返し、最後の1回やっと動きがとまり掛留を経てC(長三和音)で終止します(ピカルディ終止)。
ショパンがバッハを敬愛していたことを考えると、アーメン終止、ピカルディ終止もバッハからの影響は大きかったのだと思います。

以上今回ショパン初期の名曲「革命」の和声を中心に分析してみました。後期のマズルカやプレリュードに比べると、ほぼ機能和声の中におさまっていることがわかりすが、和声等大枠はバッハ、ベートーベンの踏襲するもショパンらしさは十分発揮されていて、すばらしト思います。

 次回は「革命」をコード譜にして、ちょっと自由に演奏してみます。
  こちら⇒ http://imaijazz.blog76.fc2.com/blog-entry-85.html


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http://www.eonet.ne.jp/~imai-jazz/index.html
(クラシックの曲を分析しながら演奏するレッスンも行っております♪)

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【2017/05/20 12:13】 | 和声分析・楽曲解説(クラシック、ジャズ)
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